「死」からも税金取る…? 納骨堂に課税の愚

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 相続&葬儀・墓地のぶっちゃけ話   05 

墓参女性 従来型の墓地が、承継者もいなくて
「無縁化」してしまう。
少子化が進む日本の社会では、
こうして進行する墓地の荒廃は、
大きな社会問題ともなっています。
そんな中に登場したのが、
「墓地の都市化」とも言うべき
「ビル型納骨堂」!
しかし、ここへ来て、問題勃発!
都が納骨堂に固定資産税を課す
と言い出したのです――。




 宗教法人が運営する納骨堂は、2013年度末で全国に約8000施設あり、なお増え続ける気配を見せています。
 こうした納骨堂には、いろんなタイプが見られます。
 室内に墓石を安置する「屋内墓地」と呼ばれるタイプもあれば、ロッカーの中に遺骨を納める「ロッカー型」、さらには、カードをかざしたりタッチパネルを操作したりすると、遺骨が運ばれてくる「機械式型」と呼ばれるタイプもあります。
 支配人・長住は古い人間ですから、さすがに「機械式」はどうも……と抵抗を感じるのですが、遠隔地の墓地では墓参もままならない――という都市生活者の事情も考えると、こういうシステムもまた、ある意味では必要なシステムではあろうかと思います。
 ところで、ここへ来て、問題勃発!
 なんと、その「納骨堂」に、都が固定資産税を課す――と、言い出したのです。

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「宗派問わず」を問題視した都税の目のつけどころ

 突然の「固定資産税支払え!」命令に驚いたのは、東京都港区の赤坂見附近くに2年前にオープンした「赤坂浄苑」。宗教法人「伝燈院」(本院・石川県金沢市)が経営する敷地400㎡、鉄筋5階建ての「ビル型納骨堂」です。その構造は――

 1Fがエントランス、ラウンジ、寺務所。
 2~3Fは、参拝室となっていて、それぞれ6か所の参拝用ブースが設けられ、ICカードをかざすと、遺骨を納めた厨子が納骨室から参拝口に機械で運ばれてきます。
 4Fは、客殿・客間。参拝者が参拝後の会食・休憩・雑談などに使うほか、法要前の待合や僧侶の控室などとしても使われます。
 5Fは、本堂と庫裏。葬儀や法要などが行われるスペース。

 となっています。
 利用は、午後9時まで。駅近ということもあって、ビジネスマンが仕事帰りに参拝に立ち寄ることもでき、墓参がより身近になり、利用しやすくなった――と言えなくもありません。

 本来は、遺骨の一時預かり施設である「納骨堂」ですが、最近は、「永代供養」を謳う施設も増えています。「赤坂浄苑」も基本は永代供養で、永代使用料は一基150万円。護持費用として年間1万8000円が必要になります。通常の永代供養墓と比べてやや高めですが、利便性を考えると、「ま、これぐらいなら」と思える金額ではあります。
 もちろん、他の納骨堂がそうであるように、利用は、宗教・宗派を問わず。
 ところが、税務当局は、この「宗派を問わず」に目をつけたのです。
 いわく――

(納骨堂事業に利用されている2~4F部分については)教義を広め、儀式行事を行い、及び信者を強化育成することを目的としている宗教法人において、本来的に欠くことのできない活動とは認めがたい。したがって、本件納骨堂については、法348条2項3号の専らその本来の用に供せられるものとの要件は満たさないから、同規定を適用して非課税とすることはできない。

 何を言ってるのかわからない――という人も多いかと思いますが、ものすごくかいつまんで日常語に翻訳すると、

  宗派を問わずに受け入れるというんじゃ、
  本来の宗教活動とは言えないから、
  「非課税」扱いにはできませ~ん。税金取っちゃうもんねェ~。


 です。
 支配人は、腹を抱えて笑っちゃいました。何という形式主義。何という宗教的無知。こんな人たちに、「人の死」や「宗教」を語られるのは、絶対にイヤだ!――と、身の毛がよだつ思いがしたのでした。

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「納骨堂」は、法律的には「墓地」じゃない!

 いろいろ申し上げる前に、参考までに、都税当局が課税・非課税の判断の根拠として挙げた《法348条2項3号》とは何か?――を見ておきましょう。
 ここで「法」と言うのは、「地方税法」のことで、その348条は、固定資産税の「非課税」の範囲を示した条文なのですが、その「第2項3号」には、「非課税」とすべき固定資産のひとつとして、宗教法人が「その本来の用に供する境内建物及び境内地」を挙げています。

地方税法348条第2項3号
宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地(旧宗教法人令の規定による宗教法人のこれに相当する建物、工作物及び土地を含む)並びに境内地と一画をなす参拝者用駐車場を含む。

 これも参考までになのですが、この「地方税法348条第2項」では、「3号」の後にすぐ「4号」というのがあって、そこには、《墓地》とだけ記されています。
 これを聞いた人の中には、こう思う人もいるかもしれません。

  何だよ。だったら、「宗教法人法がどうのこうの」と言う前に、
  墓地は非課税。
  それでいいんじゃないの!


 支配人・長住も、まったくそのとおり!――と思います。
 しかし、みなさん。日本の法律というのは、ここがおかしいところ。
 「納骨堂」は、法律的には「墓地」という扱いじゃないんですね。「墓地」というのは、遺体を埋葬(=土葬)または埋蔵(=焼骨を土中に埋めること)する場所であって、地上で保管する場所または施設を「墓地」とは言わないらしいのです。あくまで、法律的には、「納骨堂」は「遺骨を一時的に預かる施設」と規定されているんですね。
 「墓地埋葬法」には、こう規定されています。

墓地埋葬法第2条に定められた「墓地」と「納骨堂」
4 この法律で「墳墓」とは、死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設をいう。
5 この法律で「墓地」とは、墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事の許可をうけた区域をいう。
6 この法律で「納骨堂」とは、他人の委託をうけて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設をいう。

 いまどき、「埋葬」なんてやる家族はほとんどいません。というか、そんなことをやっていたら、日本の国土は、墓地だらけになってしまいます。天皇家でさえ、「(一般人と同じ)火葬でいい」と、陛下自身が口にする時代です。しかし、たとえ「埋葬」がほとんど「埋蔵」に変わったとしても、あまり事情は変わらないだろうと思われます。
 そんな時代に、「埋蔵(土中に埋める)でないと墓地とは言えない」(=上記「墓地埋葬法第2条」参照)なんぞと言っているわけです、日本の法律は。
 時代に合わないこと、おびただしい。
 しかし、税務当局は、ここに目をつけたんですね。「よし、税金取れるゾ!」と。

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「布教」しなければ「宗教団体」ではない…?

 「墓地」でないとすれば、残る壁は、「地方税法348条第2項3号」の「非課税条項」だけです。ここに書かれた「宗教法人が専らその本来の用に供する(中略)境内建物及び境内地」という一文。ここさえ突破できれば課税ができる――と思ったのかどうかはわかりませんが、実際に、税務当局が課税の根拠としたのは、この「宗教法人が専らその本来の用に供する」とした部分でした。「宗派を問わず受け入れる」というのでは、「本来の用」が成立しないではないか――というわけです。
 では、その「本来の用」とは何か?
 「宗教法人法」第2条には、こう定義されています。

「宗教法人法」第2条が定義する「宗教団体」とは?
この法律において「宗教団体」とは、宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的とする左に掲げる団体をいう。

 たぶん、この条文を起草した人たちは、「宗教」の何たるかを理解してない人たちだったのかもしれない――と、私は思います。
 この条文を読む限り、布教活動を行って信者獲得を行い、儀式を執り行い、信者に教義を守らせる活動を行っている団体だけを「宗教団体」と認定しているように見えます。
 しかし、私が知る限り、そういう活動を熱心に行っているのは、きわめて「俗化」された「宗教団体」。もっと言うなら、「宗教」を「ビジネス」と考えているような団体だけです。

  本来、宗教とは、人の心にひそむ死への畏れや不安を取り除き、
 現実世界を超越する存在に気づかせ、
 心の平安を得させようとする精神的活動のこと。


 世界に存在するさまざまな宗教を総括的に定義すると、そういうことになるのではないか――と、私は思っています。おそらく、多くの宗教学者も、同様の考え方でしょう。
 そういう精神活動が存在するのが先で、「宗派」なんてものは、後から作られたものにすぎません。そういう観点からすると、「死者を悼もうとする人の心を、宗派を問わずに受け入れる」という納骨堂側の姿勢は、むしろ、本来の宗教活動に近い、と言うべきかもしれません。
 ただし、永代祭祀権の販売を第三者に委託するなど、その活動があまりにビジネス的である――という指摘は、甘んじて受け止め、反省すべき点ではあろうかと思われます。

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「宗教弾圧」につながらないか――という危惧

 支配人が懸念しているのは、「宗派を問わず」を「宗教本来の活動ではない」とした税務当局側の見解が、「宗派に属さない宗教的行為」を「宗教ではない」と排除することになりはしないか――ということです。
 逆に言うと、「宗教的行為」を行うなら、「どこかの宗派に属しなさい」ということになります。「どこかの宗派」とは、「既存の宗派」ということになります。つまり、どこか既存の宗派に属さない限り、それを「宗教的行為」とは認めないということになってしまいます。
 一部には、これは「宗教弾圧」ではないか――という声もあります。
 私も、その危惧は大いにあり、だと思っています。
 私が知る限り、社会には、「無宗派」を名乗る仏教徒もいますし、「無教会」を信念とするキリスト教徒もいます。そういう人たちのほうが、よほど、「宗教心が篤い」とも、私は感じています。
 そういう人たちの宗教心を、「宗派に属さないから宗教ではない」と断じるとしたら、断じる人たちの心こそ、渇いている――と言うべきでしょう。

 ちなみに、固定資産税の支払いを求められた「赤坂浄苑」側は、都に「課税取り消し」を求める訴えを東京地裁に起こし、現在、係争中です。
 できれば、この訴訟が、課税の技術論に終始するのではなく、「宗教とは何か?」「墓地とは何か?」を、根本的に問い直す裁判となってくれることを、支配人・長住は期待しているのですが……。

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