「遺骨」って、ほんとうに必要ですか?

 



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 葬儀と墓地のぶっちゃけ話   07 

遺影と花 遺骨、要らない――と、
受け取りを拒否する人たちが
増えているのだそうです。
墓地がない、持つ意思もないとなれば、
遺骨を引き取っても、処理に困るだけ。
ほんとうに骨は必要なのか?
日本人の精神は、
いま、大きな曲がり角に直面しています。




 日本社会は、急速に「無縁社会」化しつつあります。
 だれかが亡くなっても、その遺体を引き取る人間がいない。いても、経済的理由などで引き取ることができない。そんなケースが、けっして珍しくなくなっています。
 そうして、だれも引き取り手がいない遺体は、「無縁死」として市町村などの手で火葬され、「無縁墓」などに埋葬されます。こうして「無縁仏」となる死者が、毎年3万2000人にも上るのだそうです。
 仮に身内のだれかがなくなった場合、それが「同居の親族」であった場合には、その事実を届け出ずに放置してしまうと、刑法190条の「死体遺棄罪」に問われてしまいます。
 戸籍法86条、87条には、次のように定められています。

第八六条 死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知つた日から七日以内(国外で死亡があつたときは、その事実を知つた日から三箇月以内)に、これをしなければならない。
2 届書には、次の事項を記載し、診断書又は検案書を添附しなければならない。
 一 死亡の年月日時分及び場所
 二 その他法務省令で定める事項

ここに記された「届出義務者」については、以下のように定められています。

第八七条 左の者は、その順序に従つて、死亡の届出をしなければならない。但し、順序にかかわらず届出をすることができる。
 第一 同居の親族
 第二 その他の同居者
 第三 家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人
2 死亡の届出は、同居の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人及び任意後見人も、これをすることができる。

 戸籍法が定めているのは「届け出の義務」だけです。
 その後、遺体を引き取って埋葬または火葬する義務までは定められていません。
 というのも、「火葬」にするだけで、東京都の場合だと、5万円強の費用がかかってしまいます。それだけじゃありません。火葬場までどうやって遺体を運ぶか――という問題が発生します。
 遺体は、通常、棺などに入れて運搬しますが、小型の自家用車などでは入りきれない場合もあり、そうなると、葬祭業者などに運搬を依頼することになります。火葬をすませるだけで葬儀などを行わないという葬儀を、葬祭業者では「直葬」と呼んでいますが、この方法だと、最低でも8万円ほど、高いところだと22万円ほど要求される場合もあります。
 そんな費用もない――となると、遺体の引き取りまたはその処理を拒むこともできます。
 その場合には、死亡地の市町村長がそれを行うことが、「墓地埋葬法」に次のように定められています。

第九条  死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない。
2 前項の規定により埋葬又は火葬を行つたときは、その費用に関しては、行旅病人及び行旅死亡人取扱法(明治三十二年法律第九十三号)の規定を準用する。

 ただし、この場合でも、火葬などにかかった費用は、後日、相続人などが請求されることになります。

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庭に埋めたら「違法」だが、地上なら「合法」

 何とか、火葬まではすませたとしても、今度は、「遺骨の引き取り」という問題が生じます。これが、そう簡単な問題ではありません。受け取った遺骨をどうするか――という問題が、遺族には重くのしかかってきます。
 実は、「遺骨」の引き取りについては、愛知以西の西日本と東日本では、大きく風習が違っています。
 「西日本」では、遺骨は「部分収骨」と言って、遺骨の一部を骨壺に収めるだけ。後は、火葬場に処分してもらいます。一方、「東日本」では「全収骨」と言って、すべての骨を収骨します。「全骨」となると、重さは2キロ近くになり、骨壺も、西日本では高さ20センチ前後が通常ですが、東日本だと30センチ近くになってしまいます。
 これを自宅に持ち帰って、四十九日まで安置し、その後、納骨します。ただし、墓地や納骨堂があれば――の話です。
 ないと、その遺骨は、家の中に置いておくしかありません。しかし、いつまでもというわけにはいきません。焼骨とはいえ、人の骨です。そのうち、カビも生えてきます。
 どうするか?
 庭にでも埋めるか――という人もいるかもしれませんが、それは「違法」なんですね。そこが、日本の法律のおかしいところ。焼骨を部屋の中に置いておいても、何の問題もなしなのですが、土に埋めたとたんに違法。
 「墓地埋葬法」が、「墓地」と認定された場所以外の土中に、遺体や焼骨を埋葬することを禁じているからです。
 では、砕いて粉にして撒くというのはどうか?
 いわゆる「散骨」ですが、こちらは、グレーです。「散骨」の問題に関しては、いろいろと微妙な問題もありますので、機会を改めて詳しくお話しようかと思います。
 いずれにしても、「遺骨」を受け取ってしまうと、後々、悩ましい問題が生じてしまいます。そういうこともあって、「遺骨は要らない」と、引き取りを拒む人たちが増えているというわけなのです。

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遺骨を受け取らない「0葬」という考え方

 2014年に刊行されて、ちょっと話題になった本があります。
 宗教学者の島田裕己氏が書いた0葬――あっさり死ぬ』という本です。
 ちなみに、島田氏が書いた「0(ゼロ)葬」に関する本は、何冊かありますので、ご紹介しておきましょう。

  

 島田氏が言う「0葬」とは、火葬にしたら、遺骨の処理は火葬場に任せ、いっさい引き取らない――という方法です。
 ただし、「引き取らない」が認められるかどうかは、地域によって差があります。もともと「部分収骨」が慣習となっている西日本では、「一部」が「0」になるだけの違いですから、大した問題ではないようにも見えます。全体的な傾向としては、「引き取り拒否」もOKにしようという地域が増えているようです。
 「0葬」を提唱する島田氏は、こう言っています。

0葬」にすることで、私たちは墓の重荷から解放される。私たちは、墓が必要だからそれを造っているわけではない。遺骨が残るから、それを葬る場所を必要としている、という面が強いのだ。

 遺骨があるから、墓が必要になる⇒墓があるから守る必要が生じる
 ⇒守る人がいなくなるから「無縁墓」が増える。


 日本社会全体に広がりつつあるこの矛盾に満ちたサイクルを断ち切るには、「遺骨を受け取らない」という選択も、一考に値する考え方だろうと、私は思います。
 「遺骨」にこだわる日本人の価値観を、そろそろ見直す時期なのかもしれません。

支配人・長住哲雄の近著です!


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Re: No title

私の生き方さま

いつもコメント、ありがとうございます。
「骨にこだわる」という日本人の精神そのものが、
失われていくだろうと思います。
でもね、私は思うんですよ。
人は、死んだら自然に還るだけ。
そして「千の風」になるのだ――と。
歌でも言ってるように、「そこに私はいません」なんですよね。

哲雄

No title

ガムやサイパンで遺骨収拾が行われてますが、ああいう光景もあと10年くらいでなくなりそうな気はしていました。

その人が生きているときのことを思い出す人がゼロになったとき、人間は改めて死ぬのだということを聞いたことがあります。そのとおりだなぁ、と思います。

改葬や墓の移転が、今すごく多いそうですが、先祖代々の墓、というのはもはや完全な少数派となったのでしょうね。
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